ウサイ USSAI
USSAIのルーツは、遠く地中海に浮かぶイタリアの”サルデーニャ島”。前世紀までスロヴェニア西部はオーストリアハンガリー帝国、イタリア、旧ユーゴスラヴィアの支配下に置かれていました。祖父の代で一家は現在のプリモルスカ地方のCrnice村(チェルニーチェ)に移住しました。ワイナリー名の「USSAI」は故郷のサルデーニャ島でよく知られている名前です。その折にスロヴェニア語表記の”Usaj”と名字を改名しました。2007年に誕生したワイナリー「USSAI」は、故郷をリスペクトする想いにインスピレーションを受けています。現在、父ストヤンは最前線からは退き、ダボリン(Davorin)とクレメン(Klemen)の2人の息子でワイナリーは切盛りされています。
自然なワイン造りには、「健全」で「完熟した」ぶどうが不可欠です。そう、全ての物語は畑ではじまるのです。USSAIのぶどう畑では、ゆっくりと4世代を超え、木々は着実に育っています。20世紀に植えられた樹齢70年のぶどう木も健在です。剪定を短くして収量を抑えた結果、1本の木から1本のワインが生まれるというスタイルが確立しました。年のの良し悪しにより、ぶどうのクオリティが基準に満たない場合は、生産量を極端に抑えたり(なんと700本!)、あるいは当該キュヴェに限定して、その年は造らないといったストイックな方法で品質を守ります。
USSAIの全ての畑には、除草剤、農薬、化学肥料は使用しません。様々な異なった土壌がひしめき合った地で、それぞれの品種が最も適した土地を選んだとストヤンは言います。土壌の多様性はCrnice村とその周辺の個性です。一般的に黒ぶどうは重量感のある土壌に、白ぶどうは泥灰土が主体の軽い土壌に植えます。ところがUSSAIでは白ぶどうのマルバジアを重い密度のある土地に植えます。よってマルバジアを用いた白ワインやオレンジワイン、は土地の個性が反映された「ヘビースタイル」に仕上がります。また、長めの醸しとオーク樽での6ヶ月の熟成が、フルボディかつ丸みを帯びたテイストへと導きます。ワインの専門家の間では、オーク香とマルバジアの個性は調和が素晴らしいと評されています。誠実で生真面目なUSSAIですが、他にはない普通ではない、並外れて面白いことを試みています。私はそのユニークさがワインの味わいにも直結していると感じています。
USSAIでは白ワインでも3〜4年間はカーヴで寝かせます。良質な滓(おり)の上でゆっくりと年月をかけて熟成したワインには、豊かな風味と柔らかさが与えられます。滓は酸化防止にも効力を発揮するので、亜硫酸の使用量も少なくて済みます。
このようにして、巨大宇宙のようなスケールの、大きなエネルギーを秘めたワインが出来上がります。造り手の魂を感じるようなマルバジアやレブラ(=リボラジャッラ)はスロヴェニア国内はもとより、EUでも高い評価を受けています。また白ワインのみならず、メルローやカベルネソーヴィニョンなどの赤ワインにも定評があります。ボルドー右岸の格付けシャトーと肩を並べるような色濃くてエレガントなタイプを筆頭に(同ワイナリーのメルローはラディコンの赤ワインにそっくりだという感想もあり)、飲み手の意見が反映されたフレシュで楽しく飲めるような赤ワインも造っています。後者は1リットルボトル仕様。価格もリーズナブルな「祖父の時代の昔ながらのワイン」です。
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